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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
五
「ちぎり家……?」
「ええ」
「変だなア……」
と、思ったが、行動の不可解な弓子のことだから、何かわけがあるのかも知れない。
「あたし、たのまれたので、町へ出たついでにここへ来て、あんたを待っていたのよ」
「そうですか、そりゃどうも……」
「いいえ、お安いご用よ」
宮子は早口に言った。
「――ちぎり家ご存知……?」
「いいえ」
「じゃ、あたし今暇だから、御案内しましょう」
「でも……」
躊躇したが、宮子はさっさと起ち上って、勘定を払うと、
「じゃ、参りましょうか」
鶴雄をうながして、べにやを出た。
鶴雄は何だか気が進まなかったが、しぶしぶついて行った。
宮子と一緒に歩くのはいやだったが、しかし、弓子にはやはり会いたかったのだ。
だから、サイコロを振っても見なかった。
五
人通りが多い――というより、まるでどうしてこんなに人間がいるのかと、思われるくらい混雑している京極や、寺町通りを横切ると、もうそこは、打って変ったようにひっそりと静まりかえって、いかにも京都らしい家並みが続く蛸薬師通りである。
ここは人通りもまばらである。
その蛸薬師の通りを西へ真っ直ぐ――御幸町を越え、麩屋町を過ぎ、富小路を二三軒西へ行くとちぎり家の別館があった。