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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

五

と、弁解のような、謎のようなことを言った。

「じゃ、誰が小郷を殺すんですか」

と、鶴雄はきいた。

五

「さあ、誰だろうね」

と言って、小田は自分で自分の言葉にどきんとした。

小郷を殺すのは、勿論作中人物だが、しかし、小田は鶴雄だとは考えたくなかった。

弓子だとも考えたくなかった。

弓子の姉の千枝子だとも考えたくなかった。ふと、君勇のことがうかんだ。君勇が小郷を殺す――考えられないようだが、考えられないこともなかった。しかし、君勇だと考えるのもいやだった。

望月三郎……。

姦通を発見された真紀子が、望月をそそのかして、小郷を殺させる――それも考えられないこともなかった。が、これはあまりに通俗すぎる。

しかし世の中というものは往々にして通俗小説以上に通俗的である。事実は小説よりも奇であり、月並みである。

「なるほど、望月かな」

しかし、流行歌手の女たらしが自分の一生を賭けてまで、そんな大それたことが出来ようとも考えられなかった。

「結局、誰もないじゃないか。――してみると、やっぱり小郷を死なせるというのはむりかな」

考えながら、護国神社の前から清水の方へ折れて行った。