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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

だから、取り戻しに来られたら、当然の権利として、あなたに返すわけよ」

「あんたは立候補すればいい」

鶴雄は皮肉った。

「ありがとう、お妾出身の女代議士もあるんだから、掏摸出身の女代議士だって不思議じゃないわね」

「かえって乙かも知れない」

鶴雄はにやりと笑ったが、すぐ生真面目な表情になると、

「――とにかく、この百円は僕は受け取りませんよ」

「あら、どうして……?」

「僕は金を貰いにやって来たんじゃない。そんな風に思われるのは心外だ。あの百円は掏られた途端に、あきらめたんだから、今更返して貰おうと思わない」

「へんな人ね」

と、弓子は微笑して、

「――じゃ、何しにここへいらしたの……?」

「だから、言ってるじゃありませんか。サイコロを返してほしいと……」

鶴雄が言うと、弓子は呆れたように、

「ますます変な人ね。サイコロそんなに必要なの……?」

「必要だ」

きっぱりといったが、しかしふと赧くなった。なぜ赤くなったんだろう。

「必要なわけ、ききたいわ」

「つまらぬ好奇心を起さずに、さっさと返して下さい」

「言わなければ、返さない」

「なぜ、そんなに好奇心を起すんです」

「なぜ……?」