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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

から吉田の三高へ通っている梶鶴雄といえば、この界隈で誰ひとり知らぬ者はない。――しかし、お茶屋の息子で三高生というのが珍らしいというわけではなかった。

今は「桔梗家」の女将だが、鶴雄の母親はかつて美貌をうたわれた先斗町の名妓で、その血を享けているせいか、鶴雄は女たちにぞっと寒気を覚えさせるほどの美少年だった。そんな意味で知られているのだ。

だから、君勇もすらりとした鶴雄の長身を一眼見るなり、それと判ったが、なぜかふと赧くなった。

そして、一寸頭を下げて、すれ違いかけたが、何思ったのか、急に引き返すと、

「ぼんぼん、どこイお行きやすンえ……?」

そう言いながら、十七の歳より体を濡らしはじめて、二十三の今日まで、沢山の男に触れて来たせいか、むっちりした肉づきに、したたるような色気をたたえた肩を、いきなりどすんと鶴雄の肩に寄せて行って、

「わてもその辺までお伴させとくれやすな」

うっとりした眼で、鶴雄の顔を覗き込んだ。

そしてぱっと小娘のように赧くなった、髪の毛がふと鶴雄の頬に触れた。

鶴雄はつんと身を引いて、

「その辺ってどの辺だ」

ぶっ切ら棒に言った。

「どこイでも、ぼんぼんのお行きやすところへ……」