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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
二
の訳文にある言葉だった。
鶴雄はふと、弓子の言葉を思い出した。
「――鋭いわね。あなたは……」
やがて、「そろばん屋」を出ようとした途端鶴雄は、ふと「アメリカとは何ぞや」という青い表紙の薄い本を見つけた。
鶴雄はおやっと思って、その本を手に取ってみた。「アメリカとは何ぞや」という標題に惹かされたのと、一つはその本の訳者が鶴雄の学校の山吹正彦という仏蘭西語の教授だったからだ。
頁をくると、開巻一頁の冒頭に、
「なぜ世間の人々は、こんなに稀にしかアメリカ人の心理を研究しようとしなかったのか」
という文章が出ていた。
「ふーむ」
鶴雄はうなった。
「――なぜこの本がもっと早く出なかったのか。戦争中にこの本が訳されて読まれておれば、日本はばかげた戦争なぞはじめなかっただろうに……」
そう思いながら、訳者のあとがきを読んでいると、店の奥で電話を掛けている女の声が聴えて来た。
「――もしもし、小野屋旅館ですか」
小野屋旅館ときいて、鶴雄は急にその女の方を見た。
二
「――お宅に望月さん……」
と、一寸声を落して、
「――お泊りじゃない……? あそう。じゃ取次いで下さらない……? こちら小郷ですと、そう言って頂戴」