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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

「気でも狂ったのかも知れない」

と、鶴雄は思わず小田の顔を見た。

「三高へはいるって云っても、しかし、僕の奴は復校だよ」

小田はなおも真面目な顔で、

「――僕は三高に五年間いて、追い出されたんだよ。つまり追放だね。理由は出席日数不足だよ。ところが、三高もこの頃民主的になって、出席簿をとらないらしい。――ねえ、そうでしょう、山吹さん」

「そうだよ」

山吹教授はおもしろそうに答えた。

「してみると、こんどは僕も及第する見込みがありそうだ。僕は断然復校しますよ。復校願を出します。出席日数不足で放校するというのは、反民主的ですからね。僕は十年前の僕の放校処分に、異議を申立ててもいいんでしょう。あはは……」

「あはは……。こりゃいい。僕も君の復校に尽力するよ」

山吹教授が笑いながらいうと、小田は、

「じゃ、復校願を出しましょう。しかし、登校に及ばず、名誉卒業にして置こうということにならないかな。そしたら、こんどは大学へ入学願書を出します」

「ところで、小田君」

と、山吹教授はそろそろ話題を変えるべきだと思ったのか、

「――君、先斗町のことを書くんだろう?」

「ええ」

「じゃ、先斗町のことは梶君にきき給え」