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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

幹男は今更のように自分のした事を後悔した。

お雪は十九歳……。こぢんまり纒まった可愛いい顔立ちで、おまけに色が白かった。本名は芳枝だが、余り色が白いのでこの家へ女中として雇われて来た時、途端にお雪という名をつけられたくらいである。

幹男ははじめの間はそんなお雪を見ても何とも思わなかった。

が、ことしの正月、十七歳になると、もうお雪を見て、虚心坦懐でおれなかった。

幹男は時どき鏡の前でニキビをつぶしながら、お雪の肢態を瞼にえがくようになった。

ある日、学校へ行くと悪友が騰写版刷りの本を貸してくた。

この本は幹男の大人をにわかに目覚ました。

その夜、お雪が蒲団を敷きに来た。

じっと息を凝らしながら、幹男はお雪の容子を見ていた。

何かの拍子に、ちらと白い足が覗いた。

幹男はいきなり立ち上って、お雪のうしろへ廻った。

「お雪!」

「……? ……」

お雪は振り向いた途端、「あッ」いきなり足をすくわれてたおれた。

幹男は学校で柔道部へはいっていた。

お雪は幹男が柔道の手を見せたさに、冗談に、無邪気な気持で自分を倒したのだ――と思った。

そして、裾をかき合わせて立ち上ろうとすると、幹男はいきなり折り重なるように、お雪の体の上へ……。