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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

「のせる……? あはは……。京洛日報の社長はわしの友人じゃよ」

小郷は依然として、参らなかった。

「この男は世の中に怖いものがないのであろうか」

弓子はピシャリと小郷の顔を撲りたい衝動を感じながら、

「それから、もう一つ投書が来てるんですが……」

「あはは……小郷虎吉ついに投書欄の人気者になったか」

「投書の内容は、実は……」

居並ぶ芸者や舞妓の顔を、素早く見廻して、弓子はズバリと言った。

「――実は、奥様のことなんですが……」

「家内……?」

と、さすがにきき返した。

「はア」

「家内がどうした……?」

「…………」

わざと黙っていた。

そして、おもむろに煙草に火をつけると、弓子は、

「一寸ここでは……」

申し上げられないと、含みを持たせた。

「あはは……」

もう小郷は笑い声を立てて、

「――浮気でもしとるというのか。あはは……、それなら丁度都合がよい。そろそろ追い出して、新しいのに変えようと思っていたところだ」

そして急に起ち上ると、

「――どうだ、皆んなホールへ行かんか。相馬君、君も一緒にどうだ」

「ええ、お伴しますわ」

弓子はしめたッと思った。

そして小郷や芸者のあとについて、先斗町の路地をぬけ、三条河原町のキャバレー歌舞伎へついて行った。