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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

十

「かんにんどっせ」

くるりと背中を向けると、いきなり部屋を出て行った。

そして、何かを決したような、思いつめた表情で二階への階段を一段々々ゆっくりした足取りで登って行った。

「あてはどないなってもええ。あてはどないなってもええ」

と、呟きながら――。

十

小郷と二人きりの部屋へ入れられて、鈴子はもう何もかも諦めていた。

いや、諦めると言えば嘘になる。

諦めきれなかった……。

と、いって、もうどうにも仕様がなかった。

芸者の子と生れて、自然に舞妓になってしまった自分の運命をただなげくよりほかに、何を恨もうか。

その愁いを含んだ鈴子の横顔を、小郷はとろんとした眼で、ながめていた。

行燈式のスタンドの青い光に照らされた鈴子の顔は、もう頬紅の色も見えず、青白いというより、むしろ百合の花のように白かった。

百合の花のように可憐で、清楚であった。

痛々しいばかりに、清楚であった。

その花を、いきなり手折る――という残酷な快感の中へ、あらゆる苦悩を押しかくそうとする小郷の手は、いつもの彼の手よりも荒々しかった。

鈴子ははっと思う間もなく、抱きすくめられてしまった。