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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

「まさか命を賭けるなんて言葉は、戦争中の標語みたいじゃないか。もっとも、命を賭けた恋って言葉もあるがね」

「早く言って下さいよ」

鶴雄はひどく乗気だった。

「よし」

と、小田はうなずくと、にやりと笑って、

「――僕は鈴子を身受けして、君にあげよう。君、鈴子に惚れているんだろう」

鶴雄はぱっと赧くなって、

「へえ、そんな金があるんですか」

と、わざと、とぼけてみせた。

「近いうちに旧作の印税がはいることになっている。金なんか持ってたって、落すだけだ」

「あくまで、落したと決めてるんですね」

と、鶴雄は笑った。

「で、君は何を賭ける……?」

「僕は、そうですね……」

と、鶴雄は考えて、

「――僕は何もないから、このサイコロを賭けましょう」

「サイコロ……?」

と、小田は軽蔑したように言ったが、急に、ああそうかと判って、

「――なるほど、そのサイコロは命のつぎに大事な奴らしいね。よし、それで行こう」

小田は痩せた身体に似合わぬ、でかい声を出した。

「しかし、落したのと、掏られたのと、いつどうして判るんです」

「ふーむ。それが問題だ」

その時、女中がはいって来た。

「御面会どす」

「誰だ」