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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

弓子は小田の話なぞ全然興味がなく、ほとんどきいていなかったが、ただ、こうして鶴雄と肩を並べて歩くのがたのしかった。

しかし、このたのしさがいつまで続くかと思うと、悲しかった。

「結局あたしは掏摸じゃないの。いつまでもこのひととつき合える人間じゃない」

そう思うと気の遠くなるくらい、寂しかった。

「姉さんを身うけしてしまったからもう、掏摸をやる必要はない。しかし、これからさき姉さんと二人で、どう生きて行ったらいいだろうか」

小野屋旅館で自分の帰りを待っている姉のことが、ちらと頭に泛んだ。

「早く帰って、姉さんと二人で相談しよう」

そう思いながら、鶴雄と別れて帰る気になれない自分が、情けなかった。

すると、勝気な弓子は、もういても立ってもいられなかった。

清水への坂にかかった時、弓子はいきなり、

「あたし、ここでおわかれしますわ」

「あ、そうですか」

と、小田はあっさりといった。

鶴雄はだまっていた。

弓子は鶴雄がだまっていることより、小田が鶴雄にかわって、ひきとめてくれないのが恨めしかった。

「さよなら」

坂を降りて行って、ふと振り向くと、鶴雄も振り向いた。