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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
丸山苔水堂というカメラ屋の前まで来て、小田はおやっと思った。
可憐な舞妓の写真が陳列されているのを見たのだ。
「あれはなんという舞妓……?」
と小田は店の中へはいって行って、そうきいた。
「先斗町の鈴子いう舞妓はんどす」
「ふーん」
小田は暫らくその写真を見ていたが、やがて、
「これを売ってもらえますか」
「どうぞ」
鈴子の写真を買って宿へ帰ると、間もなく女中が夕刊を持って来た。
近頃の夕刊は、一面にいわゆる三面記事がのる。
すぐ小郷事件の記事が眼にはいった。
「美貌の女掏摸、果して真犯人か? 先斗町の美妓君勇、意外にも小郷殺しを自白……」
こんな見出しだった。
君勇の写真が出ていた。
製版が悪くて、君勇の顔はぼうっとかすんでいた。
おまけに、君勇の勇の字が男になり「君男」と誤植されていた。
いつもの小田なら、噴きだすところだが、小田はにこりともせず、その記事をながめていた。
やがて、夕飯が終って、散歩に出ようとすると、警察署からまた電話が掛って来た。
九
小田は急いで電話口へ出た。
「もしもし、小田ですが……」
神経質な疳高い声でいうと、
「あ、小田さんですか」