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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
君勇に嫌疑が掛ってなければ自首しなかったかも知れないが……つまり惚れてたんですね」
「じゃ、嫉妬からやったんですか」
「そうです。君勇は小郷が殺される前の晩、祇園から先斗町への帰り途で、元の旦那の三好に会うたんですよ。三好は君勇に今夜つき合えといったんだが、君勇はお座敷から呼ばれているし、別れた旦那とコソコソ会っているところを見られると、芸者としての立場が苦しくなるので断ったんですね。――さア、ぐっとあけて下さい」
「いや、僕はもう飲めません。――で、断られてカッとなったんですか」
「そうでしょうね。その晩一晩中君勇につきまとったんですね。そして、君勇が小郷と泊ったことを知ったわけです。凶行の日も、つけていたんですよ。映画館の中へもつけて行って、小郷が電話室へはいったところを、やったんですね」
「へえ……? 併し、君勇が自白したというのはどういう訳です」
「君勇は三好の姿を映画館で見たんですね。だから、小郷が殺されているのを見ると、てっきり三好だと思って、三好をかばうつもりで、自分だと言ったんですね。小郷に身を任せたのも、鈴子の身代りという気持のほかに、小郷から金を取って落ちぶれた三好に貢ごうという、しおらしい気持もあったんだが、これがかえって悪かったんですね」