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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

七

退屈だよ。じゃ、この店のお手伝いでもしてみない? ――いや、僕には出来ないよ。――出来ないって、やってみなくちゃ判らないわよ。――それもそうだな、じゃ、一ぺんやってみようかな、っていう訳で、この店のボーイになったというんだが、やり出してみると案外働くことが面白いので、ああして一生懸命一日も休まず働いてるんだよ。しかし、金のありがたさというものが判らない。つまり銭勘定が判らない。欲がないんだね、面白いだろう」

「なるほど、じゃ、あの人もモデルになるわけですか」

七

「うん。まア、出来ればね。もっとも、こんどの小説であの人がどれだけ活躍するか、こりゃ僕にも判らない。あの人が登場人物として事件の渦中にひき込まれるか、どうかによって、それがきまるわけだよ」

「事件というと……?」

と、鶴雄はきいた。

「そりゃ僕にも判らない、しかし、何にも事件がなければ、この小説は書けないわけだから、僕は今、一生懸命事件を探しているんだよ」

「じゃ、つまりこうですか」

と、鶴雄はひどく小田策之助の新しい計画に興味を感じて、

「僕なら僕に、何か事件が起るでしょう。すると、それを中心に小説を運んで行くっていう計画ですか」