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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
「そうだよ」
と小田策之助は新しい煙草に火をつけた。
調理場の隅に備えつけてある短波受信機から、サンフランシスコの音楽放送が甘く聴えていた。小田はしばらくその音楽をききながら、何か考えこんでいたが、急に灰皿の中へ煙草を捨てると、きっとした表情になって、
「――しかし、事件でなくってもだ。たとえば、今日一日の君の行動だね、それからでも小説は発展させて行けるわけだ。どうだ、構わなければ僕と世界文学社で落ち合うまでの、君の今日の行動を話してみないか」
「ええ」
鶴雄はますます興味を感じた。
「話してみましょう」
そして鶴雄は、
一、先斗町の家を出て間もなく、路地の中で、君勇に会ったこと。
二、サイコロを振って、タイピストの矢部田鶴子に会うことをよしたこと。
三、四条河原町でスピード籤をひいたこと。
四、相馬弓子という「赤と黒」趣味の女掏摸に賞金の百円をすられたこと。
五、木屋町の小野屋旅館まで弓子を尾行して、弓子に面会を求め、弓子が掏摸になった原因や、弓子の姉の千枝子の話をきいて、弓子に百円を進呈したこと。
六、サイコロを振って、西へ行き、三条の「そろばん屋」にはいったこと。