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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
いわば、宮子は結婚する時にはもう処女を失っていたのである。
宮子が結婚する頃には、その学生は東京の大学へはいっていたので、既にどちらからともなく関係が切れており、宮子もその男のことはいつか忘れてしまった。
ところが今、鶴雄を見た途端宮子はいきなりその学生のことを思い出した。
三高生で、色が白く、背が高いというところが似ているのだった。
「しかし、この三高生の方がずっと可愛いい」
宮子はにわかに青春が甦って来た想いで随いて行くと、果して鶴雄は撮影所の前を真っ直ぐ歩いて行った。
やがて鶴雄は急に歩度をゆるめて標札を見上げながら歩いた。
「なんだ、下鴨に下宿してるのじゃなかったのか」
と、宮子はふとがっかりした。
しかし、宮子はすっかりは失望しなかった。鶴雄がどこか訪ねる家を探しているらしいのは、もっけの倖いだと、宮子は思った。
宮子はいきなり寄って行って、
「どこのお家を、探してらっしゃるの」
と声を掛けた。
「はあ」
と、鶴雄は帽子をとって、
「――小郷さんというお宅なんですが……」
「小郷……?」
「ええ」
「じゃ、あなたは小郷という人をこれから訪ねて行くの……?」