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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

三

宮子は思わずキンキンと弾んだ声になった。

「そうです」

「小郷はあたしの家よ。そこ曲ったところ。うふふ……。いやでも御一緒ってわけね。うふふ……」

宮子は意味ありげな笑いを、蓮ッ葉に笑いながら、鶴雄を誘って曲り角を折れて行った。

やがて、大きな門構えの家の前まで来ると、

「ここよ。さア、どうぞ」

宮子はくぐり戸をあけて、先にはいったが、鶴雄はふと突っ立って、

「小郷虎吉」

という標札をじっと挑み掛るように見上げていた。

「何をぼんやりなすってるの。どうぞ」

宮子はじれったそうに言った。

三

宮子にうながされて、鶴雄は思い切って中へはいった。

「これがあの弓子の姉をひどい目に合わせた小郷虎吉の家か」

と、思うと、中へはいるのは何か不潔なような気がして、ふとためらったが、しかし、とにかく山吹教授の紹介状を貰ってここまで来たのだし、それに宮子に案内されてついて来た以上、まさかはいらぬわけにもいかなかった。

白い椿の咲いている庭を通って、やがて鶴雄は応接室へ通された。

「一寸待ってね」

宮子は親しそうな口を利いて、出て行くと自分の部屋にはいり、三面鏡の前に坐って、化粧をなおしながら女中を呼んだ。