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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

小田策之助は真面目か不真面目か判らぬ様な顔をして、きいた。

「つまり女と一緒に風呂にはいることが……」

と、鶴雄は赧くなって答えた。

「ああ」

と、小田は軽くうなずいて、

「なるほど、はじめてだろうね。でそれからどうなったの? ほかになにかはじめての経験があった……?」

「…………」

鶴雄はしばらく黙っていた。

「小郷宮子は、君に、あんたはうぶなのね……と言ったんだろう? それから? 君は何と答えたの?」

「黙っていました」

「ふーん。なるほど黙っていた……のか。すると?」

「すると、相手は……」

「つまり宮子がだね」

「ええ。いきなり、あんた首筋真っ黒じゃないの、洗ったげるわと言って手を伸ばして……」

鶴雄の首を抱こうとした……というのである。

鶴雄は宮子の手を払おうとした。

すると、宮子は鶴雄の手を掴んで、あっという間に、その手を自分の胸のふくらみに当てようとした。

「あッ、何を……」

円みを帯びた柔い感触に、鶴雄はどきんとした。やけどをしたような驚きだった。

「――咄嗟に僕は……」

と、鶴雄が言うと、小田は膝を乗り出して、

「咄嗟に、どうしたの」

と、きいた。

「咄嗟に、手をひっこめて湯槽から逃げ出して、浴室を出ました」