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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

いうかと思うと、いつのまにか、手につかんでいた砂の目つぶし。

笑止です。

「わッ」

と、面を抑えて三人のならず者が、たじろいだ隙を見て、おりんは逸早く月江の手をとり、きれいな砂浜を一散にかけ出しました。

そして、二、三町ほど走ッて行って、また、小舟のかげに顔を出し、いまいましそうに見送っていた人の方をながめて、

(いい気味!)

と、いわないばかりに手をはやしました。

ところが、それから月江とおりんの主従が、横磯の砂浜をきれてゆく頃――振顧ってみると、たッた三人だったならず者の影が、いつか、七人にふえ、九人にもふえ、衆を狩りあつめて、どこまでも尾いてくる様子。

「お嬢様、大変です、大変です」

「うしろをお見でない、うしろを見ると、よけいに狼は飛びついてくるものだから」

「だって、帰れないじゃございませんか」

「錦浦の方へ歩いて見ようよ、わたしはまだ、観音様の石門も見ないし」

「見物どころじゃございません」

「お前がわるいのだよ、あの法斎湯に仕掛があるなんて、土地の名物にケチつけたから、それをよい言い懸りにして来るんです」

「まあ、どうしましょう月江様」

右は念仏山の断崖、左は海、道はそのふもとに添う一筋です。