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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

「それは大変な旧家だ。江戸にしてもまだ家康公開府以来二百年とはならないのに、一千年も前から武蔵にお住居とは驚きましたな」

「ところで、当代の月江様は、御隠家様のお孫にあたるが、今ではお血統の一粒種、ほかにお子様もないところから、ひどく御心痛遊ばしている」

「なるほど、それはお大切なわけ。そういう御旧家であってみれば、何か、夭折をしないような、家伝の名薬があってもよいわけだが……」と、馬春堂は、自分も狛家の家族になった気で、

「病の遺伝は厄介なものと聞いておるが、何かその、今のうちに、御工夫がありそうなものではございませんか」

「それに就いて、御隠家様には、まだ月江様がお小さいうちから、ほとんど十幾年の間、本草書類や伝家の古書を渉猟して、その夭折の病源をたずね、やっと、一つの奇薬を見つけたのでござる」

「おお。では今日に至っては、その御心配もとれたわけか、やれやれそれで手前も安心したが、してそれに利く名薬は何でございますな?」

「あは、は、は、は」

と給仕の郷士が、急に腹を押えて笑いこけたものですから、馬春堂は怪訝な顔を作って、

「何をお笑いなさる」

「イヤ、こっちの事で。