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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

「さっき、それで逃げて来た手下のやつに聞いてびっくりしたんだ」

「相手が、おれのうけもちの金吾と聞いてギョッとしたが、何しろ、怪我が軽くっていい事をした。金右衛門がやられ尺取が召捕られた上に、稲吉までがどうかしたひにはかたなしだからな」

「だが、相手の金吾に投げつけられたはずみに、ひどく腰骨を打ったとかで、今夜は例の家にもぐって寝込んだそうだから、ことによると、あいつだけは明日の晩は来られないかもしれない」

「そりゃあ何しても案じられる。じゃ、おれはこれから、奴の見舞に寄ってそのことも話しておくから、雲霧の方へだけ、今のことを知らしておいてくれ」

「承知した、それじゃ、あしたの晩」

「ウム、宵はまずいから、九刻ごろ」

「鼻寺だっけな」

「忘れちゃいけねえよ」

「はいはい」

笛を流して四ツ目屋は横町へ曲りました。

その立ち話の時間も入れて、四半刻ともたたないうちに。

もう寝支度をしている飛脚組の土間へはいると、九兵衛は帳場の筆と巻紙を惜りて、即座に三ツの手紙をしたためました。

糊箱をひきよせて、びたびたと三通の手紙を封じ、さてこれでいいという風に、

「番頭さんは居ませんか」