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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
次郎と月江は、彼のあとについてすぐ草深い裏庭へ廻ってゆきました。おりんの身はどうしたろうか? 近づくに従って、予感の教える、いやな恐怖におどおどするのが、自分でも制しきれない足どりです。
すると、雑草の折れ敷いたところを目あてに、ガサガサ歩き廻っていた半五郎が、
「この辺だ」
と、有り合わせた鍬を持ちはじめました。
そこで、次郎もあわてて手伝おうとしましたが、仮面を泥だらけにしてはと気がついて、ふところから風呂敷を出し、仮面をくるんで襷の代りに肩から斜めに背負いこみます。
そして半五郎と一緒に、セッセと土の下をさぐりましたが、どうもその土の当り具合が少し不審です。
「おかしいなあ」
「不思議だ」
生唾をのんでじッと立っていた月江は、こわごわと寄って来て、
「どうしたの?」
たずねますと、半五郎も次郎も、一緒に鍬を投げだして、
「居ませんよ。おりんさんは」
「えッ」
この驚きは、ホッとしたよろこびでもありました。
けれどまだ、それで彼女の生命に保証がついたとはいわれません。逃げたのであろうか? 場所が違っているのじゃないか? と三人の迷いはかえってふかくなる。