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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
ステップも何もめちゃくちゃな、まるでやけになったような踊り方であった。
小郷がいつまでも踊っているので、君勇と鈴子は手持無沙汰にホールの隅の椅子に腰を掛けていなければならなかった。
君勇は小郷なぞ放ったらかして、さっさと帰ってしまいたいくらいいらいらしていたが、鈴子はべつに退屈もせず、君勇に貰った鶴の絵のはいった扇子を弄んでいた。
君勇はその鈴子の横顔を見ると、
「なるほど鶴雄さんと似合いや」
と、ひそかに呟いた。
「――鶴雄さんが好きにならはるのン、無理はない」
そう思うと、嫉ける前にまず、
「――あてみたいなもンあかん」
と、いう諦めが先に立って、がっかりした。嫉けるにしては、大人気ない。が、やはり寂しかった。
この気の遠くなるような寂しさは、一体何であろう。
夜は次第に更けて行った。
ホールから、拍手の音が聴えて来た。
ラストのバンドが始まったのだ。
やがて、それも終った。
踊っていた客はぞろぞろと玄関へ出て来た。
キャバレーの前に佇んでいた三好は、はっと物影へ身をしのばせた。
五
夜の木屋町は美しかった。
「べにや」の軒の長い赤提灯、円いピンク・ブルウ・レモンイエローの提灯の灯りが、高瀬川の流れに映って、しみじみと春の夜更けの感じだった。