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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

と言いながら、鶴雄をうながして六畳の部屋へ案内した。

庭に面した小綺麗な部屋だったが、はいった印象は、下宿屋の学生部屋よりも乱雑を極めて、あきれるほど汚なかった。

第一、床の間や置戸棚の上は勿論畳の上まで、書きつぶし、原稿用紙や新聞や雑誌や手紙がまるで紙屑屋の家のように、置きっ放しにしたまま、うず高く積まれているし、蒲団はしきっぱなしだし、足の踏み場もない。床の間に破れた靴下とタオルを一緒にまるめて置いてあるという始末で、鶴雄は顔まけしてしまった。

「敷き給え!」鶴雄に坐蒲団をすすめて置いて、小田は窓側の手すりに洗濯したワイシャツをひっ掛けると、机の前へ戻って来た。

「先生は奥さんに追い出されたんですか」

鶴雄はさっきちぎり家の前で、伊村からきいたことを想い出しながら、いきなりそう言った。

「先生なんて言うない。小田策さんて言えよ」

小田は髪の毛をクシャクシャとかきわけながら、怪しげな笑いを笑って、

「――追い出されたよ」

ひとごとのように言った。

「よく追い出されますね」

「えっ……?」

と、きいたが、

「――ああ三高のことか。うん。三高は追い出されるし、女房には家を追い出されるし……さんざんだよ」