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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

そこでまた新しい煙草に火をつけて、

「――だから、僕アこんどの小説でもだね……」

と、ちらりと机の上の原稿用紙を見た。

「それでも私は行く」

と、題がつけてあった。

「――土足のまま部屋の中へはいって行ってやろうと思ってるんだ、いや、土足のままなんておこがましいが、まア、たとえばだよ、下足番が履物を……と言うと、冗談言うない、僕アはじめからはだしだよって返事するような小説にしたいよ。太陽先生ども、さぞかしガヤガヤと非難することだろうッて。ざまアみやがれ。非難しながら、こっそり読んでるような小説を書くよ。僕の友人が太陽奥さんというマンガを描いているが、僕の女房はつまり太陽奥さんなんだ。僕は夜光虫先生だ。合わないよ。え、へ、へ、……」

小田はペシャリと額をたたいて、例の軽佻浮薄なる笑いを笑うと、

「――ところで、昨日のつづきをきこうじゃないか」

「つづき……?」

「小郷の家へ行ったろう……? それからだ……」

十

小田は、こんどの「それでも私は行く」という新聞小説で、本当にあったことを、そのまま、ルポルタージュ式に、出来るだけ小田自身の想像を加えずに書き、場所も人物も実在のまま使うという奇妙な計画を樹てていた。