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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

知れん」

と、同情したので、折角のたのみをむげにも断り切れず、昨日の夕方、小郷の家へ行ってからの行動を、小田に語った。

――入浴していると、いきなり宮子がはいって来たこと。

――浴室を飛び出して、応接間へ戻って来ると、弓子が婦人記者と称して来ていたこと。

――弓子に置手紙して、小郷家を飛び出したこと。

――そして、小郷と鈴子と君勇をめぐるいきさつ。「罪と罰」をめぐる感想。

――今日の正午、べにやへ弓子に会いに来ると、宮子に会い、共にちぎり家へ来て、小田に会うたこと。

「なるほど、じゃ、僕は案外一役買っているわけだね」

そう言って、小田はふと考えこんでいたが、やがて、起ち上ると、

「君、散歩しないか。京都で一番いい散歩道を教えてやろう」

「どこですか」

「高台寺だ」

そして、上衣を着ようとして、小田は、

「――あれあれ。財布がねえぞ」

と、頓狂な声をあげた。

「着物の袂にはいってませんか」

「なるほど、昨日は着物だったね」

小田は袂の中を探していたが、ない。

「落したのかな」

「掏られたんじゃないですか」

十一

「まさか。掏られるような、そんな間抜けじゃないよ。落したんだよ」