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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

君勇は肩で笑って、

「――どこまで……?」

「どこへでも、姐さんの行く所まで……」

「ぷッ!」

と、君勇はふきだした。

さっきこの路地で、自分が鶴雄に話しかけた時のことを、想いだしたのだ。あれとそっくりだと笑ったのだが、しかし望月はそんな事情は知らない。

望月はちょっと気を悪くしかけた。がしかし元来うぬぼれの強い彼は、自分の言い方が気が利いていたので、君勇が笑ったのだと、思うことにした。

すると、自分でも何となく笑い声を立てながら、こうして笑い合ったことで、急に親しくなったと思い、ぐいと肩に力を入れて寄り添うて行った。

君勇はつんと澄していた。

が、歌舞練場の前まで来ると、

「おーけに、さいなら」

と、云いざまに、とんとんと階段を上って中へはいった。そして、腹をかかえて笑った。

望月は軽い当身をくらったように、ぽかんと突っ立って、間抜けた顔で見送っていたが、やがて、

「ちぇッ!」

と、歩きだした。

そして、三条大橋の袂から小橋の方へ折れて行った途端、彼は、

「おやッ!」

と、眼をみはった。

赤いブラウスに黒ズボンの女が、小橋を渡って木屋町へ上へ上って行くのを見たのだ。