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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

部屋の下を流れるせせらぎの音は、まるで小郷の苦悩を刻むように、耳について離れなかった。

小郷はこの苛立たしいせせらぎの音から逃げ出したくなって、君勇を伴って、桔梗家を出た。

そして、花見小路に最近出来た「京都プルニエ」で食事を済ませて、勘定を払おうとすると、財布がないことに気がついた。

「あてが持ってまっさかい」

君勇はハンドバッグの中から、金を取り出しながら、ふと別れた旦那の三好のことを思い出した。

「あては、こうして、御馳走食べてるのにあのひとは……」

と、思うと何か済まない気がした。

「――あてのこんな姿を見たら、あのひとはどない思うやろ」

鶴雄へのひそかな義理立てから、鈴子の身代りとなって、小郷に身を任したことが、今は情なかった。

「――こんないやな男に……」

一晩中自由にされていたかと思うと、殺してもなおあきたりないくらい、小郷が憎くなって来た。

「プルニエ」を出ると、やがて小郷と君勇は四条通りを歩いて、京極へ来た。

ある映画館の前まで来ると、小郷はいきなり足を停めた。

アトラクションに出演している望月三郎の名を見つけたのだ。

小郷は何思ったのか、