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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

鶴雄と賭けをしたことを、小田は想い出した。

「あはは……。もう手おくれですよ」

「ところで……?」

と、小田は煙草を灰皿の中でもみ消しながらきいた。

「弓子は……? 出来れば、罪にしたくないですな」

「そうですね、しかし、とにかく掏摸ですからね」

「有罪ですか」

「さアね」

と、司法主任はコップの底に残っていたビールをのみほして、

「しかし、一応書類は作りますが、事情が事情だし、不起訴とまでいかなくても、執行猶予にはなるでしょう」

「そうですか。それをきいて、安心しましたよ。あはは……。一杯いただきましょう」

小田は空のコップを差し出した。

翌日、小田は鶴雄と宿屋で会っていた。

「僕、鈴子を身受けしてやれなくなったよ。鈴子は舞妓をよしたんだってね」

「いや、いいんです。それに僕はもう京都にいませんから」

「どうして……?」

「どうしてって……。君勇にも弓子にも鈴子にも、もう会いたくないんです」

「ふーん」

「それに、京都という土地がつくづくいやになりました」

「じゃ、どこへ行くの……?」

「友人が北海道にいるんです。そいつを頼って牧場で働きます」

「学校は……?」

「よします。どうせ、食糧難で満足に授業は受けられないし、北海道の牧場で、独学する方が気が利いています」