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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
しかし日がたつにつれて、だんだん冷淡になった。
おまけに、もう五十を過ぎているのに、いや、それだからかある夜、姉の千枝子に挑んで来た。弓子よりもまず千枝子に眼をつけたのは、勝気な弓子よりも、おとなしい千枝子の方が口説き易かったからであろうか。
しかし、無論、千枝子は叔父の要求をはねつけた。
すると、叔父はますます姉妹に冷淡になり、しまいには、出て行ってくれと言わんばかしの、態度を見せるようになった。叔父ばかりではない、叔母も嫉妬から姉妹に辛く当った。
旧紙幣が新紙幣になってからは、それが一層ひどくなった。
姉妹は毎日、職と家を探して歩いた。そして歩き疲れて帰って来ると、叔父は、今までの生活費を全部入れて貰わねばならぬと、意外な催促だった。
姉妹はもうキャバレエへ行ってダンサーになるよりほかはないと思ったが、近所の人がダンサーになるくらいならと、教えてくれたのは、木屋町のヤトナ倶楽部だった。
千枝子ひとりで出掛けて行ってきくと、前借は五千円、新円で先払い、宴会でお酌をするだけでいい。芸もいらないという。
「ダンサーよりはいいわね」
と、千枝子は帰って、弓子に言った。