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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

だから、いつも妹にはかなわないという気持だった。

それだけに一層、こんな場所で妹に会うのは辛かった。

「昨夜のことを見抜かれた」

と、思った。

そんな風な妹の眼付きであった。白く冴え返った眼で、じっと見つめていたのだ。

果して、弓子は云った。

「姉さん、昨夜ここで泊ったのね。――男の方と一緒……?」

「…………」

だまって、千枝子はうなだれていた。

「その辺、歩かない……?」

そして、肩を並べて、四条通りの方へ高瀬川のほとりを歩きながら、弓子は、

「――あたし、姉さんに相談があって来たのよ」

「相談……?」

「叔父さんち、飛び出そうと思ってるの。だって叔父さんたら、姉さんがいなくなると、こんどはあたしにいやなことをしようとするのよ。昨夜よ。あたし、夜があけるとすぐ出て来たの。ところが、倶楽部へ行ったら、姉さんは昨夜からまだ帰らないというでしょう。貸席っていうの? 名前をきいて、路地の表まで行って、姉さんの出て来るのを待ったのよ」

「ごめんね」

「謝ることはないわ。でも、あたし、姉さんと一緒にヤトナになるつもりだったけど、よすわ。ヤトナってお酌だけじゃないのね、莫迦ね、姉さんは……」