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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

ちらっと鶴雄に投げた素早い視線が、印象的だった。

「作家だな」

と鶴雄は直感した。

「こちらに山吹先生おいででしょうか」

と、きくとその男は、

「ああ、おられますよ」

ぶっ切ら棒に云って、

「――どうぞ」

鶴雄は中へはいって行った。

山吹教授は部屋の隅の「ライフ」や「リーダーズ・ダイジェスト」や「ヴァニティ・フェア」等、近着のアメリカ雑誌がうず高く積まれた傍のソファに掛けて、校正用のゲラ刷に眼を通していた。

鶴雄はちょっと躊躇したが、思い切って寄って行って挨拶すると、

「やあ。掛け給え」

山吹教授は空いている椅子を指した。

「はあッ」

鶴雄は頭を下げて、椅子に掛けようとすると、長髪の男が寄って来て、

「君、ちょっと……。僕の帽子があるんだよ」

鶴雄が危く尻に敷こうとしていたソフトを取った。

「あ、済みません」

「いや、なに……。尻に敷いても構わぬけどね……君は女じゃないから」

変な洒落を云って、笑った。そして再び窓側へ行こうとするのを、

「あ、小田君!」

と山吹教授は呼びとめて、

「――君にいい人を紹介しよう」

「……? ……」

長髪の男が戻って来ると、山吹教授は鶴雄に、