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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
ハンドバッグも何も持たぬせいか、颯爽とした大股だった。
「ふん」
と、鶴雄は鼻を鳴らして、
「――生意気な女だ」
後姿を見送りながら、スピード籤の屋台の隣に出ている「悲願! 戦災者引揚者急援同盟」の慈善鍋のマイクから流れる声を、聴くともなしに聴いていた。
「――焼け残った幸福な花の都の京都の人々にお願いします。この美しい京の都にも、春にそむいた家なき十万人の戦災者引揚者が流れて来ていることを、忘れないで下さい。これらの気の毒な同胞を、幸福な京都の人々よ、一刻も早く救ってあげようではありませんか」
鶴雄はその演説よりも、慈善鍋の立看板の方に心を惹かれた、数字が出ているからだろうか。
悲願! 戦災者引揚者急援同盟募金成績
第一回 七百五十二円三十銭 四月十三日 於円山公園
第二回 三百四十三円十銭 四月十七日 於嵐山
「なんだ。これっぽっちか。二日掛って、千円の寄附しか集らないのか。だから、京都はけちくさい、京都の人間は冷たいと言われるんだ」
そう呟いた途端鶴雄の頭に、
「そうだ。今貰った百円をこの慈善鍋に寄附するという手もあるぞ。一寸いやみだが……」
という考えがだしぬけに浮んだ。