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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
旦那になろうというのである。
しかし、君勇はもはや旦那を取る気はなかった。落ちぶれた三好と縁が切れて以来、つくづく旦那を取るのがいやになっていたのだ。おまけに、小郷という男はいやでいやで、反吐が出るくらいだったから頭から断っていた。
小郷はしかし執拗に諦めず、無論今夜もそのつもりで来ていたのだ。
だから、君勇が酔いたいといったのをきいて、小郷はもしかしたら君勇もいよいよ気が折れて、うんというつもりじゃなかろうかと、我田引水した。
「まア、飲め、うんといわなきゃ帰らないぞ」
「へえん……おおーけに」
君勇はふと鼻の先で笑って、
「馬鹿は死ななきゃなおらない。うんといわなきゃ帰らない。うふふ……」
と、からかうような洒落を言って、溜飲を下げた。
そこへ、女中がはいって来て、
「旦那はん、お宅からお電話どす」
「電話……? うるさいな。どんな用事じゃ。お前きいとけ!」
「ぜひ旦那はんに出て貰ってくれと、お言いやすのどっせ」
「気の利かん奴じゃ」
小郷はしぶしぶ階下へ降りて行った。
「なんだ……?」
「あ、あたし宮子。随分あっちこっち心当りへ掛けてみたのよ。今新聞社の方が見えて、ぜひお目に掛りたいとおっしゃってるのよ」