轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
しかし、出て行って、鈴子の顔を見る勇気はなく、
「鈴子はん、お二階どす」
と、女中に案内されて階段を上って行く鈴子の姿を想像しながら胸を騒がせていた。
「鈴子は小郷の部屋へ呼ばれたんだな」
そう思うと、鶴雄はふと激しい嫉妬に燃えて、カッと天井を睨み上げた。
小郷のいる部屋は丁度鶴雄の部屋の上だったのだ。
「なぜおれの家はこんな商売をしてるんだろう」
淫蕩的な小郷の前に坐った鈴子の姿が、丁度自分の頭の上にあるのだと思うと、鶴雄はたまらなかった。
「小郷のやつは、鈴子を見てでれっとしてやがるだろう」
その通りであった。
初々しく可憐な鈴子が、清楚な花のように匂うばかりにはにかんで、小郷の前に坐った時、小郷は、
「ほう……」
と、眼を細めてしまった。
「いい舞妓だ。こりゃ一本になれば大したものだろう」
すると、小郷はにわかに鈴子への食指が動いて来た。
「いくつだ……?」
「十七どす」
つぼみのような小さな唇の間から、可愛いい舌を覗かせて鈴子は答えた。
小郷は思わずその唇の動きに見とれてしまった。
「君勇もいいが、鈴子もいい」
舞妓を一本にするには、君勇の旦那になるのとは較べものにならぬくらい金がいるが、それぐらいの金は小郷にとっては、何でもなかった。