轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
「えいッ」
と試みましたが、空を衝って、手ごたえはない。
相手は韋駄天、鵲橋を一足とびに、その黒い影は、どうとうの水の飛沫く、流れの彼岸に躍っている。
逃がした! 残念――と彼もつづいて走ろうとした刹那です、ふと忘れてしまった万太郎の声で、
「金吾、金吾ッ」
と、助勢を求めるらしく、何かしきりと慌ただしい。
「オオ」
気がつけば一方にも、今二人して立ちすくませた、異装優形の曲者が残っています。助勢を呼ぶ様子では、万太郎ひとりで手にあましていると見える。
両兎を追うもの一兎を得ず、逸早く、金吾はきびすを巡らして前の所へ戻って来ましたが、もうその時は万太郎の方も、優形の覆面を取逃がして、地団駄を踏んでいるあとでありました。
「その林の中へ逃げこんだのじゃ。こよいこそ、追詰めて、彼奴が何者であるか、その正体を見てくれねばならぬ」
優形の男の没した木立の奥へ、彼はこう言いつつ駆け込みました。で金吾も、両兎を追う愚を思い止まって、彼につづいて雑木の枝を掻き分けて行く。
しかし、奥へ奥へとすすむうちに、林の小道は幾筋にも分れ、或いは渓泉に切れ、或いは丘の上下にうねり、遂に逸した優形の男の影は見つかりません。