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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

そういう際であったせいか、ピオは深い吟味をうけた様子もなく、出陣の血祭に、江戸城の庭で斬られたらしい。死骸は小者の手に渡って、無造作に埋けられた。また「慶長甲寅」の塚石は、その死骸を扱った小者が、ピオの死後、その土壌から鶏血草が咲いたため、迷信をおこして、病むものが多くひそかに計らって建てたものであった。

どうして、鶏血草がそこに咲くか、それは想像であるが、恐らく、ピオの所持していた種子が、ピオ自身の血汐を肥料として狂わしき鮮紅の葉を伸ばすのではあるまいか。

迷信は迷信を生む。以来、江戸城の三代、四代、五代、とかく奥庭で怪我をすると、塚のせいにしたがった。

……………………………………

白石一流の文章と引証で、つぶさに認めた書を読み終ると、松平源次郎は目礼して、それをふところに納めました。

「以上、聞いたとおりな次第であるが、そこでじゃ」

と吉宗は、ズウと一同の顔を見渡します。

「そこで……」と語をつづけた吉宗は、先頃から忌むべき噂にのぼっている吹上の妖について、最後の断案を下して言います。

「――察するところ、鼠賊、猟奇の輩など、夜行の鬼を躍らすものは、ピオと申す異国の貴人が地下に抱いていると伝えられる宝刀の為す仕業と思う」