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えどさんごくし

江戸三国志

吉川 英治

「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页

青空文庫

だが分らない。

町奉行所でも、どうしても分らない一つの疑問。

そも何のために日本左衛門らが、山屋敷の官庫を無益にかき廻したのか、その根本の目的であります。

解けぬ謎を解くべく、釘勘が今夜の手配に先立って、根岸に押込められている万太郎を訪ねたのは、つまりそれが重大な動機。

けれど、下世話に通じている紺足袋の若様とはいえ、先は尾張中将の御末子、正面から行ったところで番士が会わせるはずがない。

で、どうしたものか? ……と孟宗藪の立ち思案に、思わず時を過ごしている所へ、天来の人影は秀鶴頭巾であったのです。

すぐ、声をかけたものの、先の身分や往来を考えて、つい気おくれしているうちに、その万太郎の彷徨は、釘勘が折角線を引いておいた今夜の捕物配置を無意識に、打ちこわして行く結果になったので、かれは、

「ええ、しようのねえ坊っちゃんだ」

どれほど、ジリついたか分りません。

今夜伊兵衛が姿を現わすのは分っていたので馬春堂の掛小屋へ首を突っ込むところを、二人一緒に御用にするところだったのが、悠々と万太郎が這入って話し込んでいたため、その機会を逃がしたのみか、またそこを出た万太郎が、袋地の捕物陣へ邪魔をしに来ました。