轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
枝に錘をかけられて強く曲った椋の木が、ばさッと水玉の粒を散らして、元の姿勢にハネ返ったかと思うと――
「おッと、どっこい」
梢と縁の切れた伊兵衛の体が、一丈二尺の高塀の峰に、栗鼠のように取ッつかまって、そこから小手をかざしながら、
「なるほど、広い」
と、山屋敷の中のムダ地の多いのに、いささか舌を巻いた体です。
いずれこいつは、ぽんと中へ飛び込むでしょうが、小手をかざしている間に、少しこの男の伝記を吹聴するならば、――伊兵衛取る年は四十一歳、泥棒も男ざかり分別ざかりで、ホシは猿の五黄、強情で素ばしッこく、悪くゆけばドン底まで落ちて行こうし、好くゆけば位人臣をきわめるほどでないまでも、ウンと幸運にのして栄える生れ性だそうだが――但し、それは馬春堂が、九星本の所説であります。
根は百姓、御府外多摩郡阿佐ヶ谷村の産でして、業とするところは練馬大根の耕作にありますが、いわゆる武蔵野名物は草神楽、阿佐ヶ谷囃子のおはやしの一人でして、柄にもなく笛が上手。
若い時には、笛の伊兵衛といわれたものです。
で、あッちこッちの二十五座に、神楽師として雇われて歩くうちに、御定法どおり、女ができる、江戸前にかぶれてくる、百姓がイヤになる、神楽師もつまらねえ。