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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
と、強いてそこから追い返してしまう。
そして、しばらくすると、かれと同色な身装をした侍が、徒歩のため馬よりはおくれて、息をせきながら姿を見せる。
素性の知れない三人の武士は、そこで、煙草休みといったふうに、急いで来たほどのこともなく、平気で何か話しあっていましたが、
「どれ、それではひとつ、罠に懸ったやつの息の根をあらためようか」
三人一緒に、やおら腰を上げて、石神様の背中にあたる、堂の裏手へ廻りました。
堂のうしろの二重扉は、鎧組となっていて、ちょっと見ただけでは、そこが開くとは気がつきませんが、横木の桟を技巧的に廻すと微妙にギイと鳴って、観音びらきに開かってくる。
「お先へ」
と、いうと三人のうちのひとりが、龕燈を用意して光を左右に振りながら、中へ足を入れましたが、見ているまにその影が足元から消え込んで、次に這入った者も、最後の武士の姿も、吸われたように地底へかくれます。
中をのぞくと床なしの段です。
素性不思議な三人の侍は、それを心得て降りてゆきましたが、やっと身を入れるに足るくらいな狭さ。
けれど、数歩下ってゆくとその空洞は、馬春堂の落ちた例の銭瓶の穴と一つになって、なおも深い真っ暗な空虚が、一段おいて、すぐ目の前にのぞまれました。