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えどさんごくし
江戸三国志
吉川 英治
「報知新聞」報知社、1927(昭和2)年10月~終号未詳
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 577,271 字 · 1141 页
第一は、三人の風ていです。
一人は蓑直し、一人は針売の旅商人、またもう一人は、小さなカラクリ人形の箱を首にかけているくぐつ師であるのです。
「こいつだよ、こいつだよ」
やがてその人形師が、おそろしい昂奮的な口ぶりで、花の根元にかがんで言う。
「どうもこいつに違いない。ごらんよ、この色を。……ええ、どう見たッて鶏の血ッてえ色だ。鶏血草にちがいないよ」
「鶏血草かなあ? この花が」
「そうさ。まあこの色を見るがいい」
「それをじッと見つめていると、ほかの物が黒く見える」
「おそらくこんな植物が日本のどこにもありはしまい。羅馬のバチカノに咲いていそうじゃないか。ペトロ院の庭にうつりがよさそうな花じゃないか。強い信仰、殉教の血、愛の聖火、それらをしのばせるようなこの植物の色は、まったく、わしたち山岳切支丹族の遠い聖祖、羅馬の王族ピオ様のこのみに合いそうな花ではないか」
「――とすると、これこそ、今ヨハン様がたずねている、鶏血草にちがいないと言うのだね」
「そうだよ。わしはたしかにそうと信じている。それで、お前たちにも見てもらったのだが、ただ不思議なのはこの家で、だれが住んでいたのかその由来がわからない」