Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

Lesen Sie 雪之丞変化 (ゆきのじょうへんげ) von 三上 於菟吉 (みかみおときち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 344.083 Zeichen · 673 Bildschirme

Aozora Bunko

一三

事実、彼のまつげには、熱い珠がまつわっているのだ。何の涙か――真実うれし涙であろうはずもない――いうまでもなく、この世でもっとも憎悪すべき、親のかたきから、うけねばならぬ杯から呑む酒は、沸き立つ鉛の熱湯にもまさったものに感じられたのであろう。

一三

一座の酒は、はずんでいた。三郎兵衛は、どんな太鼓持より気軽な、調子のいい態度で、出来るだけ、雪之丞を浪路に近づけようと、試みるのだった。

雪之丞が、浪路から差された盃を、ゆすいで返そうとするのを、わざと、その儘、もとに納めさせたのも、彼だった。

「この頃、江戸の流行で、そなたのような秀れた芸道の人が、口にあてた盃の、お客が持ち帰るのが、慣わしとなっている。そなたも、御息女さまに、お願いして、そのお盃を、お持ち帰りを願うがよい」

なぞと、いったのは、何事も心の中を、口に出せぬ浪路の、胸のうちを、代っていってやったまでなのだ。

浪路は、嬉しさを強てかくすようにして、懐紙を出して、小さな猪口を包み、大事そうに帯の間にしまった。

太鼓持は、芸者の歌三味線で、持芸を並べたてていた。雪之丞つつましやかに、江戸前の遊芸を眺めているふりをしていたが、その胸のうちは、まるで、烈風に煽られる火炎のように渦まき乱れていた。