Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ゆきのじょうへんげ

雪之丞変化

三上 於菟吉

Lesen Sie 雪之丞変化 (ゆきのじょうへんげ) von 三上 於菟吉 (みかみおときち) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 344.083 Zeichen · 673 Bildschirme

Aozora Bunko

新しき敵

一

その彼の耳に響くのは、吉原かぶりの若者の、きびきびした啖呵だった。

「さあ、お浪人、相手が変ったぜ。弁天さまのような女形のかわりに我武者らな、三下じゃあ、変りばえがしねえだろうが、たのむぜ。その斬れ味のよさそうな刀の、始末を早くつけたらどうだ?」

雪之丞は、急に駈けるように急ぎ出した供の男の跡を追いながら、小耳をかしげていた。

――あのお若い衆は、何者なのだろう? 余程すぐれた、お腕前御練達の方に違いないが、それにしても、あの姿は?

いつか彼はもう、御蔵役人屋敷前の、脇田一松斎道場の、いかめしい構えの門前に近づいていた。

新しき敵

一

脇田一松斎道場は、森閑としていた。

丁度、昼間の稽古が済んで、夜稽古は、まだ始まらぬのであろう。

雪之丞が訪うと、直ぐに、書斎に通された。武芸者の居間に似合わず、三方は本箱で一杯で、床には、高雅、狩野派の山水なぞが掛けられている。

それを背にして、一松斎は、桐の机に坐っていた。年の頃は、四十前後――。頭髪を打っ返しにして、鼠紬の小袖、茶がかった袴をはいて、しずかに坐ったところは、少しも武張ったところがない。殊更、その風貌は、眉が美しく、鼻梁が通り、口元が優しく緊っているので、どちらかというと、業態には応わしからぬ位、みやびてさえ見える。