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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
――林檎の唄にかけてはかなりのうんちくのある山吹教授は、明日結婚式があるので欠席した。
山吹教授が結婚するのではない。山吹教授の媒酌する結婚式があるという意味だ。
山吹教授の林檎の唄がきけないというので代って島野二三夫が文若という一寸色っぽい芸者の三味線で唄っていた。
歌詞は手帳を見てうたうので、正確だったが、節ははなはだ不正確であった。
島野の隣では桑山竹夫が三十二回目のサノサ節をうたっていた。
桑山は東京から京都までの汽車の中で即製のサノサ節を四十も作ったという男である。
「さア、小田君きけ。おれのサノサをきけ」
桑山はそう言いながら、うたって――というより、うなっていたが、小田はそれどころではなかった。
運悪く隣に坐った吉井正太郎より、例によってネチネチと、最近発表した小説をけなされている最中だったので、その方の応酬に大童であった。
そこへ君勇がはいって来た。途端に小田は吉井の方はそっちのけで、いきなり君勇の方を向いて、
「なるほど、君が君勇かね。そうかね。そうかね。なるほど……」
しきりにうなり出した。
二
「何どんネ……?」
君勇はにやにやしていた。