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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
四
ちらとその男と視線が合った。
男は何かいい掛けそうにしたが、そのままこそこそと、木屋町の方へ立ち去って行った。
弓子はちらとそのうしろ姿を見送っていたが、やがて河原町の暗がりの中へ姿を消してしまった。
そして一時間たった……。
木屋町の方へ姿を消していた男は、いつの間にかまた現われて、キャバレーの前をうろつき出した。
男は、三好だった。
何のためにそんなところで、うろついているのか。
君勇がキャバレーの中にいることを、知っているからだった。君勇が小郷や弓子や鈴子と一緒に桔梗家から、キャバレー歌舞伎へ行くのを、三好はひそかにつけていたのである。
なぜ、つける気になったか。
三好自身にもはっきりとは判らなかったが、ただ形影相添う如く君勇の影に添っていたいという気持は、未練というより、もはや嫉妬からであることだけは、われながら情けないくらい、はっきりと判っていた。
誰に嫉妬しているのか。
無論小郷にむかってであった。
ところがホールの中では、少くとももう一人嫉妬にかられている男がいた。
小郷だ。
弓子があっという間にホールを出て行ってしまうと、小郷は軽い当身をくらったような、すかされた気持になったが、すぐまた背中をむき出しにしたダンサーをつかまえて、踊り狂うて行った。