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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

「――併し、その当り前のことを当り前の顔もせず、得々と太陽説をふりまわしている連中を見ていると、僕アむかむかして来るんだ。みんな自分が聖人みたいな顔をしてやがる。ジイドが言ってるよ。健康とは即ち病気が不足している状態の謂いだ――と。誰だって健康になりたいよ。しかし本当に健康になりたがっているのは病人だけなんだ。誰だって日まわりのように太陽の光線に憧れたいよ。しかし、夜をへなくちゃ太陽は登らないんだ。夜の青白い光を知っている者だけが、本当に太陽の光線に憧れるんだ」

「…………」

鶴雄はだまってきいていたが、こいつ頭が悪いぞ、こいつの喋り方はしどろもどろだと思った。

小田は鶴雄がだまっているので、謹聴しているのだと思ったのか、煙突のように煙草のけむりを吐きながら喋りつづけた。

「日本の文学なんてどうしてこう、病気が不足してるだろうね。日本の状態なんて全身これ四百四病じゃないか。大体、日本の部屋というやつは、履物をぬいで上るね。だから、文学だって、土足のまま人生の中へはいって行くような文学がないんだ。外国の文学をみろ。大文学はみんな土足のままだ。日本には下足番みたいなコセコセした批評家が多すぎるよ」