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それでもわたしはいく
それでも私は行く
織田 作之助
「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页
高台寺
一
「女の方どっせ。きれいな……」
「よし。通せ!」
やがて、はいって来たのは、赤いブラウスに黒いズボン――相馬弓子だった。
高台寺
一
弓子は鶴雄の顔を見て、はっとしたようだった。
が、驚きよりも喜びの方が大きかった。
昨日小郷の家で鶴雄が置手紙をして帰ったことは知らなかったから、弓子は鶴雄が自分にだまって帰ってしまったものと、少し恨みに思っていたのだ。何だか寂しかったのだ。
だから、思いがけなく鶴雄を見て、弓子はうれしかった。
「小田さんを訪ねて来て、よかった」
と、思いながら、両手をついて、
「――はじめまして、あたくし」
と、言いかけると、小田はいきなり、
「判ってます。弓子さんでしょう」
「あらどうして……」
お判りですときくと、小田は、
「赤と黒。梶君にきいていましたよ」
と、鶴雄の顔を見た。
「あらッ」
と、弓子は鶴雄をにらみつけるようにして、
「あなた、あたしのことおっしゃったの。お喋りね」
「…………」
鶴雄は半泣きの顔をした。小田は助け舟を出した。
「いや、人間って奴は好きなひとのことは、とかく喋りたがるもので……」
そして、膝をたたきながら、他愛なく笑っている小田の顔を見て鶴雄は、