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それでもわたしはいく

それでも私は行く

織田 作之助

「京都日日新聞」1946(昭和21)年4月25日~7月25日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 89,708 字 · 181 页

青空文庫

六

六

「お二階どす」

女中にいわれて、君勇は二階への階段を登りかけて、ちらと奥の間の方を見た。

遅い夕飯を食べている鶴雄の姿が眼にはいった。

君勇は思わず胸騒いだ。

が、いきなり鶴雄の方に寄って行くことは、何かきまりが悪かった。

君勇は心を残して、女中にせかれるままに二階へ上って行った。

小郷は君勇がはいって来ると、待ちかまえていたように、酒の酌を命じた。

「なんや、小郷か」

君勇はいけすかない小郷からの貰いだと判ると、にわかに不愉快になったが、

「一杯いただきまひょ」

と、盃をねだった。

そして、ぐっと飲みほしたが、

そのまま返盃せず、

「注いどくれやす」

と、盃を差し出して、

「――わて今夜酔わしていただきます」

ぐいぐいと呷った。

落ちぶれたもとの旦那の三好に再会した後味の悪さを、酒で消そうとしたのと、一つには階下の鶴雄に言いたいことがあった。酔わねば言えないことが……。

「そうか。酔いたいのか。あはは……」

小郷はすっかりやに下って、笑い声を立てた。

「――今夜はただでは済まさんぞ。うんと言わなきゃ帰らないってとこじゃ」

小郷は大分前から、君勇を口説いていた。