轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
04 火の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页
藤次が責めると、
「また、あんな……」
と、お甲はうらめしげな眼をこらして、泣きたいような顔をして見せる。
彼女のいい訳は、こうだった。
藤次から飛脚を受け取ると、彼女は勿論、自分だけで大坂へ来るつもりだった。ところが折わるく、吉岡清十郎がその日もまた、六、七名の門人を連れて「よもぎの寮」へ飲みに来て、いつのまにか、朱実の口から、そのことを聞いてしまい、
(藤次が大坂へ着くなら、わしらも迎えに行ってやろうじゃないか)
といい出した。それに調子をあわせる取り巻き連も多く、
(朱実も行け)
と、いう騒ぎになってしまい、いやともいえずお甲は一行十人ほどの中に交じって住吉の旅館に落着き、一同の遊んでいる間に、自分だけ一人で駕を持ってここへ迎えに来たのだという。
――聞いてみれば、事情はやむを得ないものだったが、藤次は腐りきってしまった。今日という日に迷信がわき起るほど、何か、後にも先にも、不愉快ばかりが考えられた。
第一、陸を踏むとすぐ、清十郎だの同輩だのに、旅先の首尾を聞かれることが辛い。
いやもっと嫌なことは、この頭巾を脱ぐことである。
(何といおう)
彼は、髷のない頭を苦に病んだ、彼にも侍というものの面目はある。