轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

04 火の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 页

青空文庫

三

――それは武蔵であった。

鬢の毛は、そそけ立って、一すじ一すじ、針のように凍っていた。

三

このくらいな肉体の苦痛に勝てないで、生涯の敵に勝てるか、と武蔵は自分を叱咤するのであった。生涯はおろかなこと、やがて近い日には、吉岡清十郎とその一門という大敵に当らなければならない。

吉岡方と自分との事情は、かなり険悪でまた複雑な事情にある。今度という今度こそは、先は一門の実力と体面を挙げて自分へかかって来るにちがいない、必殺の陣を布いて、来るべき日を、

(今やおそし)

と彼らは、手ぐすね引いて、待ちかまえているに相違ないのだ。

よく強がった侍が、念仏のようにいう、必死とか、覚悟などという言葉も、武蔵の考えからすると、取るに足らないたわ言のように思える。

およそ人なみの侍が、こういう場合に立ち至った時、必死になることなどは、当然な動物性である。覚悟のほうは、やや高等な心がまえであるが、それとても、死ぬ覚悟ならば、そう難しいことではない。どうしても死なねばならぬ事態に迎えられてする死ぬ覚悟だとすれば、なおさら、誰もすることである。

彼がなやむのは、必死の覚悟が持てないことではなく、勝つことなのだ。